うさぎとかめとBlues
- 店主すー
- 2023年1月6日
- 読了時間: 3分
更新日:2023年4月5日

今年は卯年なので、
ウサギにちなんだBluesのお話を。
1926年録音の
ブラインド・レモン・ジェファスンの楽曲
「ラビット・フット・ブルーズ」
“ウサギは飛び跳ねる
ウサギは1マイル走る
ウサギは子どものように鳴く"
一見何とはないような歌詞ですが、
Bluesには比喩やスラングが沢山使われていて、
その奥深くには様々な意味が込められているんです。
盲目だったレモンさんはウサギに自分を重ね、
何かを伝えたかったのかもしれませんね。
そんなレモンさん達アメリカ黒人の間でも、
昔から語り継がれてきた「ウサギとカメ」のお話があります。
皆さんご存知でしょうか?
日本では、
ウサギとカメの競争で、ウサギは楽勝で勝てると油断して途中居眠りをしていましたよね。
そして休まずコツコツ歩いたカメが勝つ、というお話でした。
そこには
「どんなに勝てそうにない相手でも、諦めずに全力を尽くせば勝つことが出来る」とか「油断大敵」という
とても日本的な教訓が。
しかし、
アメリカ南部の黒人伝承バージョンはまた全然違うお話に!
端的にどんな話かと言うと
「正々堂々と戦うウサギに対し、カメはズルをして勝つ」
というストーリーになっているんです!
…ここから先は長くなりますので、
ご興味のある方は読んでみてくださいませ。
「ウサギとカメは競争する事になりました。
競争当日、スタート地点に居たのは何とカメの奥さん。
とても似ているので、ウサギには全く見分けがつきませ
んでした。
そして当事者のカメは、あらかじめゴール地点でウサギ
が来るのを待ち伏せしていたそうな。
いざスタートすると、
道中のヤブの中には何とカメの家族が至る所で潜伏して
いました。
そしてウサギが声をかけると、その場その場にいたカメ
の家族が返事をします。
ここでもやっぱりウサギは見分けがつきません…。
そしてウサギはなかなかカメを引き離せず
イライライライラ…。
やっとの思いでゴールしてみると、何とそこには
既にゴールした当事者のカメがいた。」
というお話です。
…どうでしょう、
日本のとはだいぶ内容が違いますよね。
こちらの教訓は
「まともにやっても、どうやっても勝てるわけがないと分かっていたら、知恵をしぼれ。」
という事。
この中で「ウサギは白人」「カメは黒人」の例えだとも言われています。
当時の時代背景(黒人の生活の困難さや残酷な現実)を考えると
「自分達は神に見放されている」と感じた事は本当にたくさんあっただろうと思うんです。
生きる為に「神が救ってくれないのなら、悪魔(ズル)を味方につけよう。」と
考えるしかなかったのかもしれません。
…そりゃそうですよね。
アメリカ黒人の人達はずっと人間としての自由がない生活を強いられ、その後もずっと差別され続けてきたわけですから。
なので私には
これをどうしても「ズル」とは思えないところがあります。
(だからと言って、今の恵まれた日本の私達が安易にズルして良いと伝えたい訳ではありませんので、勘違いなきよう。)
それにしても、
昔話は国によっていろいろで深いなぁと思います。
店主すー
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